ノンチルフィルタードウイスキーという言葉を聞いたことがあるでしょうか?
ノンチルとも略され、この製法で造られたウイスキーのラベルには「Non-chill filtered」と記載されています。
ノンチルとは、冷却ろ過を行わずボトリングしたウイスキーのこと。
冷却ろ過を行わないことで、ウイスキー本来の味わいが楽しめることが魅力です。
この記事では、ノンチルフィルタードウイスキーの特徴や、チルフィルタードとの違いを詳しく解説。
初心者から上級者まで楽しめるおすすめ銘柄を紹介します。
ウイスキーの選び方に迷っている方や、より深い知識を求める方にとって役立つ情報が満載です。
ノンチルフィルタードとは?
ノンチルフィルタードとチルフィルタード
冷却ろ過(チルフィルタード)はウイスキーの品質保持のために行われる作業です。
ウイスキーに限らず蒸留酒は、低温環境で白濁したり、綿状の浮遊物(おり)ができたりします。
味わい的には問題ないですが、見た目的にあまりよろしくありません。
そのため、通常は白濁やおりを防ぐために冷却ろ過(チルフィルタード)が行われるのです。
一度ウイスキーを冷却し、しばらく放置します。
そして、白濁したり固形物が現れてきたら、ろ過を行います。
スコッチウイスキーでは、-8℃~5℃ぐらいの温度で冷却ろ過を行うことが多いそうです。
この時の温度やフィルターの目の細かさでウイスキーの味わいが大きく変わってきます。
ただ、アルコール度数の低いウイスキーほどフロックや白濁が起きやすいので、アルコール度数の低いウイスキーほど厳しい基準が採用されているそうです。
ところが、低温環境でできる白濁やおりは、大事な香り成分。
品質の安定性と引き換えに香り成分を取り除いてしまうのは、もったいないと思うでしょう。
本来の味わいが楽しみたいニーズに応えた製品が冷却ろ過をあえて行わない「ノンチルフィルタード」です。
ノンチルフィルタード製法なら本来の味わいを保持されるため、風味や香りが豊かに保たれます。
このため、ノンチルフィルタードは、本来の個性を尊重する愛好家から人気なのです。
- シングルカスク
- カスクストレングス
- ノンカラー
- ボトラーズウイスキー
- 度数46%以上のウイスキー
2つの特徴の違い
ノンチルフィルタードとチルフィルタードの主な違いは、風味と香りの保たれ方、アルコール度数です。
ろ過の過程で渋みや雑味を与える成分も取り除かれるため、チルフィルタードを行ったウイスキーは雑味が少なくなりやすい傾向があります。
対して、ノンチルフィルタードは香りの成分が残されるため、複雑な味わいがお楽しみいただけるでしょう。
渋みや雑味も言い換えれば、樽のニュアンスや複雑み。
それも含めてウイスキーの旨味と言えます。
チルフィルタード | 雑味が少なく、すっきりとした味わい アルコール度数が40~43%であることが多い |
---|---|
ノンチルフィルタード | 複雑みがあり、豊かな味わい アルコール度数が46%以上であることが多い |
高いアルコール度数では、低温環境でも白濁やおりが作られにくくなりますが、その基準が46%。
そのため、ノンチルウイスキーのアルコール度数は46%以上となっています。
46%以上のウイスキーが美味しいと言われる所以だね!
ただ、度数が高いとビギナーにはハードルが高く感じちゃうかも……。
どちらを選ぶかは、飲み手の好みや目的により異なりますが、ウイスキー本来の味わいを楽しむならノンチルフィルタードがおすすめです。
ノンチル ウイスキーの特長
樽熟成本来の味わいを楽しむ
ノンチルウイスキーの最大の魅力は、本来の風味を楽しめる点です。
冷却ろ過を行わないことで、ウイスキーが本来持っている味わいをそのまま味わうことができます。
ストレートで飲んでも、複雑みのある芳醇な香りや渋みを含んだ厚みのある味わいがお楽しみいただけるでしょう。
また、ハイボールや水割り、トワイスアップのように割って飲むことで香り高い一杯を楽しむ事ができます。
ノンチルウイスキーは、ウイスキーの個性が際立つことが魅力です。
風味に与える影響
ノンチルフィルタードウイスキーでは、冷却ろ過によって失われるはずの成分が残るため、香味が豊かになる傾向があります。
樽のニュアンスが強いシングルモルトやバーボンにおいて顕著。
濃厚な味わいがそのまま残り、豊かな香りと口当たりがお楽しみいただけるでしょう。
また、同時にノンチルフィルタードで造られたウイスキーは、ほとんどがノンカラーでボトリングされます。
カラメルの添加して補色せず本来の味わいが損なわれていないピュアなウイスキーが「ノンチル・ノンカラーウイスキー」の魅力です。
ノンチル ウイスキーの増加傾向
近年、クラフト蒸留所やシングルモルト需要の増加に伴って、ノンチル製法を採用している銘柄が増えています。
プレミアムウイスキー市場では、ノンチルフィルタードでのボトリングが特に多いです。
ウイスキー本来の味わいを届けたいと強く思う生産者が増えたのかもしれません。
この増加傾向は、ウイスキー業界全体における品質重視の流れを反映しており、世界的にクラフト蒸留所やボトラーズ企業が増えている中で今後もノンチル製法のウイスキーが増えていくと予想されます。
ノンチルフィルタードを選ぶ理由とメリット
味わいの豊かさと個性の保護
ノンチルフィルタードウイスキーの最大のメリットは、味わいの豊かさと個性が保護される点です。
冷却ろ過を行わないため、脂肪酸やエステルなどの香味成分がボトルに残り、複雑で深みのある味わいが楽しめます。
そのため、樽熟成されていた時のウイスキーに近い香味を持ったウイスキーをお楽しみいただけるでしょう。
この製法により、ウイスキー本来のキャラクターが失われることなく、蒸留所の個性を存分に味わうことができるでしょう。
おすすめのノンチル ウイスキー
ノンチルフィルタードウイスキーの中でも、特におすすめの銘柄をいくつか紹介します。
グラングラント 15年
ブルックラディ クラシックラディ
ジャンル | シングルモルト |
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生産国 | スコットランド・アイラ |
アルコール度数 | 50% |
樽 | バーボン樽、ワイン樽など |
熟成年数 | ‐ |
アイラ島の湧き水やスコットランド産大麦100%使用などテロワールにこだわるブルックラディ蒸留所のフラグシップボトル。
アイラ島ながらノンピートで作られており、フルーティでフローラルなエレガントさが特徴です。
アルコール度数50%とハイプルーフですが、口当たりがなめらかで奥深い余韻がお楽しみいただけます。
によりストレートやロック、ハイボールなど幅広く活躍できる一本です。
アランモルト 10年
ジャンル | シングルモルト |
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生産国 | スコットランド・アイランズ |
アルコール度数 | 46% |
樽 | 1stフィルのバーボン樽、シェリーホグスヘッド |
熟成年数 | 10年 |
クラフトウイスキー蒸留所のパイオニアとして有名な「ロックランザ(アラン)蒸留所」。
そのフラグシップボトルが、アランモルト10年です。
1stフィルのバーボン樽で熟成された原酒をメインに使用、シェリーホグズヘッドで熟成された原酒をバランスよくブレンドしています。
リコリスや砂糖漬けのレモンピール、シナモン、トロピカルフルーツのような甘く華やかな香りが特徴。
ストレートやロックはもちろん、ハイボールもおすすめです。
アードベッグ 10年
ジャンル | シングルモルト |
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生産国 | スコットランド・アイラ島 |
アルコール度数 | 46% |
樽 | アメリカンオーク(バーボン樽) (1stフィル & 2ndフィル) |
熟成年数 | 10年 |
カルト的な人気を誇るアードベッグ蒸留所のフラグシップボトル。
バーボン樽で10年以上熟成された原酒を使用し、ノンチルフィルタード(冷却ろ過をしていない)・アルコール度数46%でボトリングされています。
アイラモルトらしい強烈なスモーキーフレーバーとトロピカルフルーツのような香り、繊細な甘みが特徴です。
2008年にはワールド・ウイスキー・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。
シングルグレーン富士
富士山麓の伏流水を贅沢に使用した「富士御殿場蒸留所」のグレーン原酒のみで作られた一本。
同蒸留所は、異なる特徴を持つ3タイプの連続式蒸留機から多彩なグレーンウイスキーを造り分けています。
バニラやシリアル、オレンジマーマレード、焼き菓子のようなフレーバーが複層的に重なり、甘みのある芳醇で深い余韻が広がります。
シングルグレーンウイスキー富士は、キリンの世界的に見ても類を見ないグレーンウイスキーへのこだわりが楽しめる一本です。
キリン 陸
ウエストランド アメリカンシングルモルト
ジャンル | シングルモルト |
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生産国 | アメリカ・シアトル |
アルコール度数 | 46% |
樽 | 新樽 1stフィルバーボン樽 1stフィルシェリー樽 2ndフィルシェリー樽 |
熟成年数 | 3年4か月以上 |
ワシントン州シアトルからアメリカンウイスキーにシングルモルト市場の開拓をしてきたウエストランド蒸留所。
10年以上にわたる取り組みの集大成として誕生したフラグシップボトルが、「ウエストランド アメリカンシングルモルト」です。
ナッツやチョコレートのようなコクのある香りに甘くなめらかな口当たり、深い余韻が特徴。
スコットランドのモルトウイスキー造りに忠実ながら、アメリカのフロンティア精神を持ち合わせたシングルモルトです。
ティーリング スモールバッチ
ジャンル | ブレンデッドウイスキー |
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生産国 | アイルランド |
アルコール度数 | 46% |
樽 | ラム樽フィニッシュ |
熟成年数 | ‐ |
アイルランドのダブリンに拠点を置くインディペンデントボトラー”ティーリング社”の少量生産限定ブレンデッドウイスキーです。
アイリッシュモルトとアイリッシュグレーンをブレンドし、ニカラグアのラム樽でフィニッシュ。
ノンチルフィルタード、アルコール度数46%でボトリングされています。
滑らかな口当たりに甘くウッディな香り、スパイスの余韻が特徴。
ラム樽熟成による魅惑的な甘い香りがお楽しみいただけます。
初心者向けの選び方
初心者がノンチルフィルタードウイスキーを選ぶ際は、まず自分の好みや目的に合わせた銘柄を選ぶことが重要です。
基本的にノンチルウイスキーはアルコール度数が高く個性豊かなボトルが多い傾向があります。
ビギナー向きな一本としては、「キリン陸」「ブルックラディ クラシックラディ」「ティーリング スモールバッチ」がおすすめ。
また、レビューや評価を参考にすることで、初心者でも安心して選べる銘柄が見つかるでしょう。
ノンチル ウイスキーに関するFAQ
ノンピートウイスキーとの違い
ノンピートウイスキーとは、ピート(泥炭)を使用せずに製造されたウイスキーのことです。
ピートはウイスキーにスモーキーな風味を与えるため、ノンピートウイスキーはよりマイルドでフルーティーな味わいが特徴です。
本記事で紹介したボトルの中では下記の銘柄がノンピートとなっています。
ぜひノンチルウイスキーと共にお試しください。
ノンエイジウイスキーとの違い
ノンエイジウイスキーは、熟成年数を表示しないウイスキーを指します。
一方、ノンチルフィルタードは冷却ろ過を行わない製法を意味し、熟成年数に関係なく使用されます。
今回紹介したボトルの中では、下記の銘柄がノンエイジとなっています。
ノンエイジは、熟成年数に囚われずウイスキーを楽しめる魅力があります。
ぜひお試しください!
よくある質問と回答
この記事を通じて、ノンチルフィルタードウイスキーの魅力と選び方について理解を深め、最適な一本を見つける手助けになれば幸いです。
ウイスキーの新しい楽しみ方を、ぜひお試しください。
コメント
コメント一覧 (2件)
[…] ノンチルフィルタード […]
[…] また、冷却ろ過をしないで作ったウイスキー(ノンチルウイスキー)を冷凍してしまうと、せっかくの香り高さが損なわれてしまう上に劣化してしまう可能性があります。 […]