世界が熱望する究極のアイラモルト「アードベッグ」。
モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン社が運営を行っており、日本ではMHD(モエ・ヘネシー・ディアジオ)が販売をしているスコッチシングルモルトウイスキーです。
2008年に「アードベッグ TEN」がリリースされて以来、一度飲んだら忘れられないクセの強い味わいからカルト的な人気を誇っています。
スモーキーでクセのあるピート香とトロピカルフルーツのような甘い印象、ペッパーのスパイスが蒸留所の特徴的なフレーバーです。
2021年時点で、ラフロイグ、ボウモアに次ぐアイラモルト3位の販売数(約180万本)となっています。
アードベッグ
アードベッグ蒸留所について
アードベッグは、1815年ウイスキーの聖地”アイラ島”に設立したウイスキー蒸留所です。
アイラ島は島の4分の1がピートで覆われており、作られるモルトウイスキーはピートを使用したスモーキーなタイプが多いです。
その中でもキルダルトン3兄弟と言われるアードベッグを含む3つの蒸留所は、特にヘビーでスモーキーなモルトウイスキーを作っています。
中でもフェノール値が最も高いのが「アードベッグ」。
アードベッグ | 55ppm |
---|---|
ラガヴーリン | 34〜38ppm |
ラフロイグ | 自家製が45〜50ppm ポートエレン製が34〜38ppm |
スモーキーさの強い麦芽を使用していますが、精留器(ピュアリファイヤー)によってフルーティな香りも実現。
「ピートの矛盾」と言われるスモーキーでピーティながら、フルーティさとフローラルさが楽しめる味わいは世界中のウイスキーファンを虜にしています。
アードベッグのストーリー
当初はコアファン向け!?
アードベッグ蒸留所は1815年に設立しました。
ところが、この時代は密造酒造りが盛んで、1794年にはすでにウイスキーを作っていたという説もあります。
アードベッグとは「小さな岬」という意味で、創業者ジョン・マクドゥーガルは隔絶された立地に蒸留所を建てました。
その後150年以上は、彼の家系が蒸留所を守り続けていたと言われています。
ウイスキー研究家として有名なアルフレッド・バーナードがアードベッグを訪れたとき、
「隔絶された立地がロマンチックなイメージを高めた」
とアードベッグ蒸留所を讃えています。
専門家からの評価とは裏腹に、当時のアードベッグは存続が困難なほど危機的状況でした。
1980年代には、一度閉鎖をしています。
1977年、ハイラムウォーカー社が買収。
この時、アードベッグは、独自のフロアモルティングを廃止しました。
アードベッグの麦芽乾燥塔には普通の蒸留所ならついているはずの換気装置がなかったと言われています。
そのため、ピートの煙が余すことなく充満し、異常なほどスモーキーなモルトに仕上がっていたのだそうです。
あまりの煙たさからブレンダーたちにとって扱いにくいコアファン向けのモルトだったことでしょう。
以降ポートエレン製麦所のピートモルトを使うようになります。
苦悩の時代
1980年、当時はブレンデッドウイスキー人気から蒸留所過多により、需要と供給のバランスが悪くなっていました。
アードベッグもブレンデッド市場向けにウイスキーを造っていきますが、供給過多と付近のアイラモルトとの差別化ができず、1981年には閉鎖を余儀なくされます。
その後、1987年にアライドライオンズ社が買収。
1989年から再開しますが、同時に所有していたラフロイグの方が主力商品だったため、アードベッグは年2か月しか操業していませんでした。
今のアードベッグ所長も、元ラフロイグ蒸留所の職人でアードベッグの仕込みに来ていたそうです。
1997年、グレンモーレンジィ社(現モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン社)がアードベッグを買収。
この時の買収金額は約700万ポンド(約1億円ぐらい)でした。
2003年にコミッティー向けに「ベリー・ヤング アードベッグ フォー ディスカッション」をリリース
2004年には、6年熟成の「アードベッグ ベリーヤング」
2006年に8年熟成の「スティル・ヤング」
2007年に9年熟成の「オールモスト・ゼア」がリリース。
2008年には、シリーズ完結となる「ルネッサンス」が6月にリリースされ、フラグシップボトルとなる「アードベッグ TEN」が発売されました。
アードベッグの製法のポイント
生産能力(100%アルコール換算) | 140万ℓ |
---|---|
仕込み水 | ウーガダール湖 |
麦芽 | ポートエレン製 フェノール値55ppm |
ワンバッチの麦芽量 | 5t |
ワンバッチの麦汁量 | 23000ℓ |
発酵槽 | オレゴンパイン(木製)6基 |
イースト | マウリ社のドライイースト |
発酵時間 | 64時間 |
モロミアルコール度数 | 8.6~8.7% |
蒸留器 | ランタンヘッド型 初留釜1基、再留釜1基 精留器あり |
ミドルカットの度数範囲 | 75~62.5% |
ニューポットのアルコール度数 | 69% |
ラフロイグ蒸留所の生産能力が330万ℓ、カリラが650万ℓ。
アードベッグは特別に生産能力の高い蒸留所ではありませんが、アイラのシングルモルトで3位の販売数を誇る蒸留所となっています。
その理由は、ブレンデッドへの原酒提供が少ないことです。
生産量はそこまで多くなくてもシングルモルトとして出回る量が多く、一度飲んだら忘れられない味が人気の秘訣となったのでしょう。
基本55ppmのヘヴィーピーデッド麦芽
アードベッグが基本的にヘヴィーピーデッド麦芽(フェノール値)を使用します。
前記したように、ラフロイグの自社製麦麦芽が45~50ppmなので、アードベッグの方がフェノール値が高いです。
- 10ppm以下でライトピート
- 25ppm程度でミディアム
- 40~50ppmでヘビーピート
フェノール値はあくまでもスモーキーさを指す指数ではありませんが、いかにアードベッグがピートを焚きこんだ麦芽を使用しているかわかるのではないでしょうか。
ところが、アードベッグはラフロイグよりフルーティさや甘みがあり、親しみやすいと思います。
その理由は、精留器にあります。
再留釜にはアイラ唯一の精留器
アードベッグの再留釜には、精留器が取り付けられていますが、これはアイラ島唯一です。
精留器は、還流と呼ばれる現象を引き起こしやすくする装置の事で、フルーティさやフローラルさを感じさせる軽い味わいになりやすい傾向があります。
ヘヴィーピートのスモーキーな麦芽と精留器が生み出すスモーキー&フルーティな香味「ピートのパラドックス」は世界中のウイスキーファンを虜にしています。
アードベッグの定番ラインナップ
アードベッグ TEN
ジャンル | シングルモルト |
---|---|
生産国 | スコットランド・アイラ島 |
アルコール度数 | 46% |
樽 | アメリカンオーク(バーボン樽) (1stフィル & 2ndフィル) |
熟成年数 | 10年 |
カルト的な人気を誇るアードベッグ蒸留所のフラグシップボトル。
バーボン樽で10年以上熟成された原酒を使用し、ノンチルフィルタード(冷却ろ過をしていない)・アルコール度数46%でボトリングされています。
アイラモルトらしい強烈なスモーキーフレーバーとトロピカルフルーツのような香り、繊細な甘みが特徴です。
2008年にはワールド・ウイスキー・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。
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