2025年6月16日、スコッチモルトウイスキー協会(SMWS)を傘下に持つアーティザナル・スピリッツ・カンパニー(ASC)は、ベトナムに新たなフランチャイズ拠点を開設したことを発表しました。この動きは、同社がアジアにおけるプレゼンス拡大を図る中での一環であり、中国、日本、韓国、台湾に続く展開となります。
ベトナムは超高級スコッチウイスキーの成長市場
ASCは、IWSR 2024年版のデータを引用し、ベトナム市場を2億3,900万米ドル(約375億円)規模の超高級スコッチウイスキー市場として位置づけ、世界トップ10に入る有望な市場と評しました。
CEOのアンドリュー・デーン氏は、以下のようにコメントしています。
「ベトナムへの進出は、当社にとって戦略的な意味を持ちます。アジア全体における事業範囲を拡大するとともに、希少で高品質なウイスキーに対する需要の高い地域に直接アクセスできるようになります。」
アジア市場の動向と多角化戦略
ASCの最新決算では、アジア全体での売上が前年同期比で20%減少しています。特に中国と日本市場における消費の落ち込みが影響しました。しかし、台湾市場では前年比150%の売上成長を記録し、地域ごとの成長性にばらつきが見られました。
こうした中、デーン氏は以下のように述べています:
「アジアでの業績改善を中国市場の回復に依存しない形で推進しており、ベトナムのような新規市場開拓はその一環です。」
この発言からも、ASCが一極集中のリスクを避けるために、多角的な市場展開を重視していることが明らかです。
SMWSとそのグローバル展開
SMWS(Scotch Malt Whisky Society)は、世界最大級のウイスキークラブとして知られ、42,000人を超える会員を擁しています。2023年から2024年にかけては、4%の会員数増加が見込まれており、グローバルなウイスキーファンからの支持を背景に着実な成長を続けています。
本拠地はスコットランド・エディンバラのリース地区にあるVaultsバーで、会員は特別なボトリングや試飲体験を楽しむことができます。
ASCが展開するブランド一覧
ASCはSMWSだけでなく、複数のウイスキーブランドを所有しています。
ブランド名 | 概要 |
---|---|
SMWS(Scotch Malt Whisky Society) | 会員制のシングルカスク専門クラブ。世界42,000人超の会員を持つ |
JGトムソン | トラディショナルなスコッチウイスキーブランド |
シングルカスクネイション | 2024年に買収されたブランド。独立瓶詰の高品質なシングルカスクに特化 |
今後の展望と米国市場への投資
ASCは2024年12月、米国市場への進出を強化するために50万ポンド(約9,900万円)の投資を実施する予定です。このように、同社はアジアのみならず北米市場への攻勢も強めており、グローバル戦略を本格化させています。
まとめ
今回のベトナム進出は、ASCが掲げるグローバルな事業展開戦略の重要な一手であり、急成長を遂げるアジア市場において地歩を固める狙いがあります。中国や日本の市場環境が厳しい中で、新たな成長の柱としての役割が期待されるベトナム。これからの動向に注目が集まります。
記事のポイントまとめ
- SMWSを所有するASCがベトナムにフランチャイズ拠点を設立
- ベトナム市場は世界トップ10の超高級スコッチ市場(約375億円)
- アジア全体では売上20%減、中国・日本の影響大
- 台湾市場は前年比150%増と好調
- SMWSは世界42,000人以上の会員を持つ世界最大級のウイスキークラブ
- ASCは他にもJGトムソン、シングルカスクネイションを所有
- 2024年12月には米国市場に約9,900万円を投資予定
アジアにおける次なる一手を模索する企業やウイスキーファンにとって、今回の発表は大きな意味を持つものとなるでしょう。

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