アイラ島の新蒸留所「アードナッホー」から、日本市場限定のシングルカスクが登場しました。いわゆる“初物”にあたる原酒を使ったリリースです。
まだ歴史を語る段階ではない蒸留所ですが、その分、蒸留所の考え方や仕込みの輪郭が、かなり素直な形で見えるボトルだと感じます。
日本市場だけに向けた、最初の選択

今回のボトルは、アードナッホーとして初めての日本市場向けシングルカスク。2019年4月蒸留、リフィルバーボンバレル熟成、カスクストレングスでのボトリングです。
熟成は決して長くありません。ただ、その短さを補おうとするような作り込みはなく、酒質そのものを見せる方向に振り切っている印象です。40PPMのピートも、主張はありますが荒々しさは控えめで、若い原酒にありがちな角張りはあまり感じません。
「将来どうなるか」より、「今どんな姿なのか」をそのまま出した1樽、そんな立ち位置に見えます。
料理人はここを見る

まず感じるのは、クリーンさです。ピートの煙が先に立つのではなく、麦の甘さや塩気が先に見える場面が多い。
これは短熟だから、というより、蒸留そのものが丁寧に設計されているからこそだと思います。加水せず、カスクストレングスのままでも、香りと味の線が崩れにくい。扱いやすい原酒だと感じます。
料理と合わせるなら、強い燻製よりも、塩味や脂のある素材の方が相性は良さそうです。例えば、焼いた白身魚や、軽くスモークしたベーコン程度。そのくらいの距離感が、酒の輪郭をきれいに見せてくれそうです。
家・週末・店での向き合い方
家で:まずは少量をストレートで。若さとクリーンさのバランスを見るだけでも十分楽しめます。
週末に:数滴の加水で、塩キャラメルの甘さが前に出てきます。時間をかけて変化を見る飲み方が合います。
店で:語りすぎない1杯として。アイラの新しい流れを示す材料として、静かに出すのが似合います。
数字より、場の空気
225本限定、60.1%、シングルカスク。確かに数字だけ見れば、分かりやすい特別感はあります。
ただ、このボトルの面白さは、スペックよりも「今のアードナッホーが、どんな空気で酒をつくっているか」が伝わってくる点にある気がします。
完成形ではありません。だからこそ、後から振り返ったときに意味を持つ1本になりそうです。
まとめ
このボトルは、評価するためのものというより、眺めるためのものかもしれません。
アイラ島に新しく根を張った蒸留所が、最初にどんな酒を世に出したのか。その一場面を切り取った1本。そう考えると、少し見え方が変わってくる気がします。



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