日本ウイスキー市場が、2035年に約121億ドル規模まで伸びる見通しだ、という調査が出ています。年平均成長率は9.2%。数字だけを見ると、かなり勢いのある話に見えます。
ただ、このニュースは「売れている」「伸びている」で片づけてしまうには、少しもったいない内容でもあります。現場の空気や、飲み手・作り手の動きが、数字の裏ににじんでいるからです。
プレミアム化が進んでいる、というより「選び方が変わった」
レポートでは、日本ウイスキー市場の成長要因としてプレミアム化が強調されています。シングルモルト、スモールバッチ、長期熟成といったキーワードが並びます。
ただ、現場感覚としては「高いものが売れている」というより、「どういう背景で作られているか」を見て選ぶ人が増えてきた、という印象のほうが近い気がします。
バーでも家飲みでも、「これはどこの蒸留所?」「どんな樽?」という会話が自然に出てくる場面が増えました。価格は結果であって、理由ではない、そんな選び方が定着しつつあるのかもしれません。
輸出が支えているが、国内の“場”も効いている
北米や欧州、アジア太平洋地域での輸出需要が、日本ウイスキー市場を下支えしているのは間違いなさそうです。免税店や高級バーでの露出は、ブランド力を一段引き上げています。
一方で、国内に目を向けると、蒸留所ツアーやテイスティングイベントといった「体験の場」が、静かに効いているようにも感じます。
実際に香りを比べたり、原酒の話を聞いたりすることで、一本のボトルへの距離が縮まることが多いです。その積み重ねが、結果的に市場の厚みになっているのかもしれません。
クラフト蒸留所が増えたことで、選択肢の温度が上がった
今回のレポートでも、クラフト蒸留所の存在感は大きく取り上げられています。
大手が築いてきた品質の土台がある一方で、小規模蒸留所は、酵母や水、樽使いなどで思い切った表現を試しています。その結果、「これが正解」という一本ではなく、「どれを選ぶか」が楽しい市場になってきました。
これは飲み手にとっても、作り手にとっても、少し緊張感のある良い状態だと感じます。
料理人はここを見る:供給制約が“味の幅”をどう変えるか
成長の裏側で、熟成原酒の不足という話も続いています。長期熟成が前提の酒だけに、すぐに解決できる問題ではありません。
その結果、ノンエイジ表記や、複数原酒の組み立て方に工夫が生まれています。料理で言えば、素材が限られる中で、どう皿を組むか、という話に近いです。
供給制約はネガティブな話題になりがちですが、表現の幅が広がるきっかけにもなっている。そういう見方もできそうです。
家・週末・店での向き合い方
家:一本を大事に飲むなら、背景や造りを知ってから注ぐと、時間の流れが変わります。
週末:飲み比べセットや小容量ボトルで、蒸留所ごとの差を感じるのも気持ちいいです。
店:銘柄名よりも「どういうタイプか」を聞いてみると、会話ごと楽しめる場になります。
まとめ
日本ウイスキー市場が伸びている、というニュースですが、その中身を見ていくと、単なるブームというより、飲み手と作り手の距離が少しずつ縮まってきた結果のようにも見えます。
数字はこれからも動くでしょうが、どう味わわれ、どんな場で語られるか。その積み重ねが、次の10年を形作っていくのかもしれません。



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