2026年1月、江井ヶ嶋酒造から「香掬(かすく) ミズナラ熟成10年」が限定発売されます。 シリーズ第三弾。
ですが、数字以上に“時間の重さ”が前に出てくる一本に見えます。
ホグスヘッドで2年、その後ミズナラ樽で8年。二つの樽を渡り歩いた10年です。
ミズナラ熟成10年という言葉自体は珍しくありませんが、ここまで長く向き合った原酒は、やはり場の空気が違います。
ミズナラ樽を後半に据えた、10年の流れ
ミズナラ樽は、派手に香りを乗せる樽ではありません。
熟成は遅く、扱いも難しい。だからこそ、途中で結果を急がない設計が前提になります。
江井ヶ嶋蒸留所では、ホグスヘッドで骨格を作り、その後ミズナラに委ねる流れを選びました。
これは、樽香を足すというより、原酒と樽が同じ速度で年を取るような感覚に近い気がします。
料理人はここを見る
ミズナラ由来の香り、と聞くと「白檀」「伽羅」といった言葉が先に浮かびがちです。
ただ、このウイスキーの説明を眺めていると、甘み・酸味・塩味・煙が均等に並んでいます。
突出した要素がなく、全体が丸くつながっている。
これは“香りを掬い上げる”というより、液体の中に香りが溶け込んでいる状態に近いのかもしれません。
カスクストレングスという選択
加水なし、冷却ろ過なし。アルコール度数は62%。
数値だけを見ると構えてしまいますが、ここでは香りを閉じ込めるための選択に思えます。
ストレートで全体像を確認し、少量の加水で輪郭をほどく。
その過程そのものが、この10年を辿る行為なのかもしれません。
合わせるなら、重ねすぎない
家でなら、塩気のあるナッツや素焼きのアーモンド。 週末なら、鶏むね肉を低温で火入れしたシンプルな一皿。 店で出すなら、白身魚の軽い燻製くらいが、ちょうど良さそうです。
何かを足すより、引き算の料理のほうが、この香りとは相性がいい場面です。
数字の話も少しだけ
瓶詰本数は667本。販売は蒸留所と公式オンラインのみ。 追いかける必要はありませんが、「今の江井ヶ嶋が、ミズナラで何をやりたかったのか」を見るには、分かりやすい一本です。
まとめ
ミズナラ熟成10年、カスクストレングス。 言葉だけ並べると強い印象ですが、中身は意外と静かなウイスキーに見えます。
香りを掬う、という表現がしっくりくるかどうか。 それを確かめる時間そのものが、このボトルの役割なのかもしれません。



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