年が改まると同時に、ウイスキーの世界にも空気の変化が生まれます。 派手な革命というより、飲み方や作り方の“重心”が少しずつ動いていく感覚です。
2026年、その動きをいくつかの場面から眺めてみます。
ミニサイズという贅沢
カクテルシーンでは「ミニ ミクソロジー」という言葉が聞こえてきます。いわば“スナック可能なドリンク”。量を抑え、その分だけ温度と輪郭を保つスタイルです。
ロンドンのTayēr + Elementaryでは、ワンシップマティーニやミニハイボールがすでに定着しつつあります。強い酒を少量で楽しむ。飲み疲れず、しかも最後まで冷たい。
量を減らすことが、満足度を下げるわけではない。むしろ、体験を濃縮する方法に見えます。
再生農業という土台の話
持続可能性の議論は続いていますが、2026年は「再生農業」がより前面に出てきそうです。
英国のFieldenは当初から再生型農法を取り入れ、ブルックラディ蒸留所も土壌と生物多様性を軸にした取り組みを進めています。
ロンドンのドッグハウス蒸留所は、地域農家との連携で穀物の二酸化炭素排出量削減に踏み込んでいます。
ウイスキーは穀物の酒です。畑の話が中心に戻ってくるのは、自然な流れなのかもしれません。
コラボレーションの質が変わる
蒸留所同士、あるいは独立系ボトラーとの協業も続きます。ただ2026年は、単なる話題づくりではなく「意味の共有」が鍵になりそうです。
英国の独立系ボトラーThe Heart Cutは、複数蒸留所と組んだ「BARLEY」を発表。さらに5,000人以上の愛飲家の声を集め、味の方向性を探りました。
GreatDramsのグレッグ・ディロンも、本物志向と土地性への回帰を語っています。派手さよりも誠実さ。
ホワイトピーク蒸留所もまた、消費者との対話を重視しています。
作り手と飲み手の距離が、少し縮まる年になるのかもしれません。
うま味とハーブの余白
フレーバーの方向性も変わりつつあります。
セイボリーなカクテル。味噌やマッシュルームのニュアンス。うま味を重ねるアプローチが広がっています。
香港のRosewood Hong Kongのバーでは、ハーブや風味豊かな要素を取り入れたウイスキーカクテルが提案されています。ハイボールは引き続き主役ですが、より繊細なバランスへ。
力強さよりも、整った余韻。そんな方向へ舵が切られているように見えます。
まとめ
ミニサイズの一杯。 畑から始まる物語。 協業のかたち。 そして、うま味という静かな広がり。
2026年は、大きく騒ぐ年というより、ウイスキーの足元を見直す年になりそうです。
グラスの中身だけでなく、その背景まで含めて味わう。そんな視点を持てると、今年の一杯は少し違って感じられるかもしれません。



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