スコットランド・エロンにあるブリュードッグ蒸留所が、ここ数ヶ月で静かに役割を終えることになりそうです。クラフトビールの象徴的存在であるブリュードッグが、蒸留部門の事業縮小と事実上の閉鎖を発表しました。
発表によると、ブリュードッグ・ディスティリング社は操業を停止。これに伴い、ローンウルフ・ジン、アブストラクト・ウォッカ、カーサ・ラヨス・テキーラ、ロン・ボデガといったスピリッツブランドはすべて製造中止となります。蒸留所初のシングルモルトウイスキーも、リリースを迎えることなく生産終了となりました。
このウイスキーは、2026年の発売が示唆されていた存在でした。2025年のインタビューでは、当時のマネージングディレクターが「翌年には店頭に並ぶ予定」と語っていたこともあり、今回の判断は少なからず驚きを伴います。
いま起きているのは、撤退というより整理
ブリュードッグ側は今回の決断について、「慎重に検討した結果」と前置きしつつ、ビール事業とワンダーランドのRTDカクテルに経営資源を集中させるためだと説明しています。蒸留酒全体を否定するというより、事業の焦点を明確にするための整理、といった印象です。
蒸留チームはすぐに解散するわけではなく、今後数か月をかけて在庫の整理や既存の供給契約への対応を進めるとされています。急激な幕引きではなく、できるだけ波風を立てない縮小を選んだ形です。
料理人は、こういう場面を見る
ビール会社が蒸留に挑戦する、という流れ自体は珍しくなくなりました。ただ、ビールとスピリッツでは、時間の流れも資金の重さもまったく違います。
特にウイスキーは「待つ」事業です。香味が整うまで寝かせる時間、在庫として抱え続ける覚悟。その間も市場の空気は変わっていきます。今回の判断は、その時間軸と、今のブリュードッグが立っている場所とのズレが、はっきり見えた結果なのかもしれません。
無理に意味づけしなくていい話
このニュースを見て、「クラフト蒸留は厳しい」「ウイスキー市場が危ない」と結論づけるのは、少し早い気もします。
むしろ、大きな名前を持つ企業であっても、合わない事業は手放す。その当たり前の判断が、いま表に出てきただけとも言えそうです。
ビールに戻るブリュードッグ。蒸留所からは距離を置くブリュードッグ。その姿をどう見るかは、人それぞれでいいと思います。ただ一つ言えるのは、慌てて何かを判断する必要はなさそう、ということです。
まとめに代えて
蒸留所が閉じる、という言葉はどうしても強く響きます。でも今回の話は、失敗談というより、方向転換の記録に近い気がします。
ウイスキーやスピリッツを取り巻く空気を考える材料として、頭の片隅に置いておく。そんな距離感で眺めるのが、ちょうどいいニュースかもしれません。



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