2025年5月、スコットランドの神秘的なネス湖に沈められた樽で熟成された、世界初の試みともいえるスピリッツ「ドムヘイン(Domhayn)」の初回ボトルが、オークションで1,000ドル(約15万円)以上で落札されました。この異色の熟成法が話題を呼び、ウイスキー業界に衝撃を与えています。
「ドムヘイン」とは?
ゲール語で「深い」を意味する「ドムヘイン」は、創業者ジェームス・パターソン氏がネス湖を泳ぐ人々から着想を得て立ち上げたプロジェクト。バレンタインデーにネス湖の水深約214メートル(702フィート)に沈められた樽は、そこにおける高圧・低温環境の中で熟成が進められました。
この試みに使用されたのは、2010年蒸留のシングルモルトの大麦スピリッツで、アルコール度数は55.5%。
科学的裏付けと品質保証
ドムヘインの熟成は通常のウイスキー製法とは一線を画すものであるため、スコットランドの法律上「ウイスキー」としての認定は受けていません。それでも、独自性と品質を証明するため、オックスフォード大学化学部が分子レベルでの成分分析を実施。比較サンプルと異なる分子プロファイルが確認され、この水中熟成が蒸溜酒の性質を明らかに変化させたことが証明されました。
「伝統的な熟成では決して得られない驚きの変化を体験しました。樽を回収したとき、その違いは明らかでした」——ジェームス・パターソン氏
熟成メカニズム:水圧と木の相互作用
水中熟成によって、圧力変化が樽の圧縮・膨張を引き起こし、木材とスピリッツの間に独特な相互作用が生まれます。このプロセスにより、抽出と吸収のバランスが変化し、香味構成に大きな影響を与えるといいます。
「それぞれの樽は、圧力が恒久的に変化する前に一度だけ潜水に耐えることができます」とパターソン氏は語ります。
限定6本、1本目が1000ドル超に
「ドムヘイン ネス湖エディション」は、全世界でわずか6本しか存在しません。そのうちの1本が、2025年5月のオークションで850ポンド(約113,000円/約1,133ドル)で落札され、大きな話題となりました。
コレクターズアイテムとしての価値に加え、スピリッツ熟成の可能性を大きく拡張する実験として、業界関係者からも高く評価されています。
まとめ
- ネス湖の水深214mに沈められた樽で熟成された「ドムヘイン」
- 熟成は2010年蒸留の大麦スピリッツ、ABV 55.5%
- オックスフォード大学による分子分析で変化を科学的に証明
- スコットランド法上「ウイスキー」ではないが、革新的な製法で注目
- 限定6本、初回ボトルは約1,133ドルで落札
伝統を超えた革新が、次世代のスピリッツ文化を切り拓く「ドムヘイン」。今後の展開にも注目が集まります。
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