2025年5月、ドイツ・ミュンヘンの地下室で一風変わったウイスキーが誕生しました。その名も「Bohemian Schnapsidee(ボヘミアン・シュナップサイド)」。ドイツ語で「酔った勢いの突拍子もないアイデア」を意味するこの名の通り、本作はスコットランドの国民的炭酸飲料「Irn-Bru(アーン・ブルー)」の風味を取り入れた、型破りなウイスキーです。
本記事では、ユニークなコンセプトの背景や製造過程、味わい、そしてこの挑戦的な作品にかける造り手たちの情熱について詳しくご紹介します。
ベーム・モルツとVAMEの誕生
このウイスキーを手がけたのは、ミュンヘンに拠点を構える小規模なウイスキープロジェクト「VAME(ヴァーメ)」。構成メンバーは以下の4人:
- マックス・クリング(33歳、保険統計学者)
- フォルカー・クリング(60歳、機械エンジニア)
- エゲ・ギュミュス(33歳)
- アンドリュー・ブロディ(35歳、オーストラリア出身の保険技師)
彼らはボードゲームを楽しむ仲間であり、同時に熱烈なウイスキー愛好家。5年前にVAMEを結成し、奇抜でユニークなウイスキーを創り上げることを目的に、趣味の範囲を超えて製造に着手しました。
製造プロセス:アーン・ブルーとアイラモルトの融合
今回のプロジェクトは、空のウイスキー樽にアーン・ブルーをなんと80缶注ぎ込み、炭酸が抜けて馴染んだところでアイラ島産のピーテッド・スコッチ(7年熟成)をフィニッシュとして寝かせるというもの。
その後、2ヶ月間の熟成を経て風味が十分に溶け合った段階でボトリングが行われました。アイラのピート感とアーン・ブルーの人工的な甘さが融合し、誕生したのが「Bohemian Schnapsidee」です。
使用されたアイラモルトの正体は、業界のルールにより非公開ですが、スモーキーさと薬品的ニュアンスを持つモルトであることは間違いありません。
テイスティングノートと特徴
このウイスキーは、スコットランドの伝統とドイツの発想力が融合したユニークな味わいを特徴としています。味の評価は賛否両論あり、造り手のマックス・クリング氏は「甘く香るが、口当たりとフィニッシュには重さがあり、アーン・ブルーに敏感な人は意見が分かれる」と語っています。
香りにはウイスキー由来の熟成香とともに、微かに柑橘と薬品を思わせる甘さが立ち上ります。味わいは、最初は甘く、やがてピートの煙と酸味が口に広がり、複雑な余韻が続きます。
Bohemian Schnapsideeのスペック表
項目 | 内容 |
---|---|
名称 | Bohemian Schnapsidee(ボヘミアン・シュナップサイド) |
製造者 | VAME(ドイツ・ミュンヘン) |
種類 | ピーテッド・スコッチ(フィニッシュ) |
フィニッシュ | アーン・ブルー注入樽(80缶) |
熟成年数 | 7年(アイラ産) |
アルコール度数 | 非公開 |
本数 | 72本限定 |
価格 | 75ユーロ(約63円)【元の金額(日本円)】 |
スコットランドへの敬意と今後の展望
造り手たちは皆、スコットランドへの愛情を語ってやみません。マックス氏は「スコットランドは私たちの心のよりどころ。ジュラ、アイラ、スカイ、スペイサイド……どこも訪れるたびに魅了される」と語り、その思いがこの挑戦的な作品に結実しています。
VAMEは今後も、バックファスト、アペロール、スペツィ(オレンジ風味のコーラ)など、さらに型破りな素材を使ったウイスキー製造を計画しています。まさに“実験精神”をボトルに詰めたプロジェクトの進化は、今後も目が離せません。
まとめ
「Bohemian Schnapsidee」は、ウイスキーという伝統的な酒に対し、遊び心と大胆な発想で挑んだ唯一無二の作品です。アーン・ブルーという異色の飲料とピーテッド・スコッチの融合は、多くのウイスキー愛好家の間で話題となること必至です。
- ミュンヘンのアマチュア蒸溜家グループVAMEによる企画
- スコットランドの炭酸飲料アーン・ブルーを80缶使用
- アイラ島のピーテッド・スコッチ(7年)を2ヶ月間フィニッシュ
- 72本限定生産、価格は75ユーロ(約63円)
- 今後も異素材との融合に挑む予定
スコットランドとドイツの文化が溶け合った“酔いどれアイデア”の結晶。奇抜でありながら、深いリスペクトに満ちた一本を、ぜひその目で、舌で確かめてみてはいかがでしょうか。
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